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なぜ役員報酬を変更するの?その仕組みを足立区の税理士が解説!

中小企業の経営者や役員の皆さん、役員報酬を適切に設定することが、節税対策や会社経営の安定性に大きな影響を与えることをご存じですか?特に、役員報酬を変更することには、さまざまな理由やメリットがあります。しかし、その仕組みや注意点をしっかり理解しておかないと、税務調査で問題になるリスクも…。


本記事では、足立区の税理士が「中小企業が役員報酬を変更する背景や具体的な仕組み」について、わかりやすく解説します。役員報酬に関する税務や経営のポイントを押さえて、会社運営をよりスムーズに進めましょう!



1.役員報酬を変更する主な理由


①税務対策の最適化

 役員報酬額により、法人負担の法人税、役員個人負担の所得税(+住民税)、両者負担の社会保険料の3つの社外へ流出するコストの調整が可能です。翌期の会社利益の増減を予測し、適切な役員報酬額を設定することで、最適な税務対策を行うことができます


a.法人税の最適化

 役員報酬は定められたルール内で設定することで、全額が法人の損金として認められます。法人の利益が増加すると予想される場合には役員報酬の増額、利益が減少すると予想される場合には役員報酬の減額をすることで法人税負担額の最適化を行います。

 役員報酬額の設定方法には3種類(「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」)あり、それぞれのルールについては、「3.注意点と回避方法」の項目で詳しく解説します。


b.所得税と住民税の最適化

 所得税と住民税は役員個人の課税所得額に応じて金額が確定します。課税所得が小さい程税負担額が減少します。課税所得は給与所得から所得控除を引くことにより計算されます(給与収入のみの場合)。給与所得は、役員報酬の設定で調整可能です。所得控除は家族構成、保険加入の有無、ふるさと納税額、医療費額などにより変動します。そのため、各人の状況に応じた適切な役員報酬額を設定することで、税負担額を最適化することが可能です。

 法人税率と所得税率の違いを利用して、法人と個人の手残り額(税引き後の金額)の総額を増加させることも可能となります。


c.社会保険料の最適化

 社会保険料は、役員報酬を基準に計算されます。そのため、報酬額の設定次第で大きな負担軽減が期待できます。また、「事前確定届出給与」を設定し、年に3度までの賞与支給であれば、賞与の社会保険料計算は通常の場合と異なる方法になります。この差異を利用することで、役員報酬の年間支給額を一定としながらも、社会保険料を減少させることが可能です。

※ただし、社会保険料負担を減らしすぎると将来受け取れる年金額が低くなります。


d.その他に対応できる事項

‐退職金の活用‐

 退職所得は、給与所得と比較して税負担が大きく優遇されています。役員報酬の設定次第で、法人に資金を残し退職金を準備することも可能です。


②資金繰りの安定化と業績変動への柔軟な対応

 企業を維持発展させていくためには、会社の資金力を継続的に保つことが重要です。役員報酬は企業の業績に合わせて柔軟に変更することが可能であり、会社を長く支える重要な要素となっています。


a.キャッシュフロー優先の経営判断

 役員報酬は、他の経費と比べて調整が容易なため、短期的な資金繰りの調整に適しています。経営者が報酬を柔軟に調整することで、企業のキャッシュフローを直接的に改善し、経営体力を保つことができます。資金繰りが厳しい場合には役員報酬を減額し、その分を仕入れや従業員給与に回すことで事業の継続性を確保に繋がります。


b.利益剰余金の蓄積

 業績が良いときに報酬を抑えることで、利益剰余金を増やす戦略も取れます。これにより、将来の投資や景気悪化時の緊急資金に備えることが可能です。また、剰余金が十分にあると、金融機関からの信用力が高まり、融資条件の優遇を受けやすくなります。


c.経営リスクの緩和

 役員報酬を柔軟に変更することで、経営リスクを抑えつつ業績変動に対応できます。特に景気の波を受けやすい業種では、毎月の役員報酬を低額に抑えつつ、「業績連動給与」を設定することが経営の安定に寄与します。


d.利益確保と分配の調整

 利益を確保することは、事業運営の基盤を支える為に非常に重要です。一方で、従業員の給与や福利厚生として分配をすることで人材流出を防ぎ、新たな人材の確保に努めること、社会活動への寄与により企業のブランドイメージを向上させるなどの分配も事業目的次第では欠かせません。利益確保と関係者への分配のバランスにも役員報酬は関わってきます


③その他の影響

a.経営者自身の生活水準に応じた調整

 中小企業の役員は経営者自身であることが多く、役員報酬はその生活資金としての意味合いも強いです。 事業状況や個人のライフステージに応じて報酬を増減することが可能です。例えば、お子さんの進学や家族の医療費が必要な時期に報酬を増額し、経営が厳しい時期には減額して会社の資金を優先するなどの対応が考えれます。


b.金融機関への配慮

 中小企業では、金融機関や出資者の目線を意識した経営も重要です。役員報酬の変更もその一環として行われます。資金調達の際には報酬減額を通じて、経営陣が財務改善に積極的である姿勢、出資者に示すことで資金調達につながる場合もあります。



2.役員報酬を変更する際の仕組み

役員報酬

①報酬変更の目的・方針を明確化する

 まず、役員報酬を変更する理由や目的を明確にします。これにより、変更が会社の経営戦略や税務ルールに適合するかを判断しやすくなります。

 業績の向上に応じた報酬増額、財務健全性を確保するためのコスト削減、税務上の最適化を図るための調整などが目的として挙げられます。


②報酬額のシミュレーションと決定

 次に、変更後の役員報酬が会社の収益やコストにどのように影響するかをシミュレーションします。シミュレーションを行う項目としては、会社全体のキャッシュフローと法人、個人両面での税金と社会保険料の負担額となります。

 過去の業績や目標達成度に基づいた合理的な金額を設定します。中小企業では、他社事例を参考することが難しいので、数多くの経験ある税理士に相談するのも良い手法です。


③株主総会または取締役会での承認と議事録の作成、保管

 役員報酬の変更は、会社法に基づき株主総会か取締役会で承認を得て、議事録を作成し保管するする必要があります。


④税務署への届出(事前確定届出給与の場合のみ)

 事前確定届出給与を設定する場合は、税務署への届出が必要です。この手続きを失念してしまうと、役員報酬が法人の損金不算入となり余計な税金を支払う必要が生じます。


⑤支払いスケジュールの調整と実行

 新しい報酬体系に基づき、支払いスケジュールを調整します。定期同額給与の場合は年度内で毎月同額を支払います。業績連動給与の場合は業績評価基準をもとに変動額を計算し、適切に支給します。



3.注意点と回避方法

役員報酬

 役員報酬は税法に則って設定しなければ、損金として認められません。役員自身が、これまでに解説した事項を考慮して役員報酬を設定したとしても、税法の基準から漏れてしまったら、調査で指摘され追加納税になる例がほとんどです。ここでは、税法に則すための注意点について解説します。


①税法への対応

 役員報酬の変更が適切に行われるためには、税務上の取り扱いを理解し、それに沿った手続きが必要です。主に以下の3種類が存在します。


a.定期同額給与

 毎月同額で支払われる役員報酬です。支払い額が年度内で一定であることが必要条件です。役員報酬を毎月同額で支給する場合、損金算入が可能です。年度内で変更があった場合は納税者不利になる申告内容でないと認められない例が多いです。報酬を変更する場合は、「事業年度開始後3か月以内」に株主総会などで確定する必要があります。1年間でこのタイミングでの変更のみ認められています。


b.事前確定届出給与

 年度開始前に税務署へ届出を行い、金額や支給時期を固定した報酬や賞与を設定します。あらかじめ届出を行わなければ損金として認められません。そのため、設定は慎重に行いましょう。


c.業績連動給与

 業績に応じて変動する役員報酬です。一定の条件を満たせば、法人税上の損金として認められます。条件は、業績評価基準が合理的であること、支給基準が事前に確定していること、株主総会での決議を経ていることの3つになります。


②その他ルールへの対応

a.会社法のルール

 株主総会または取締役会で決議し、議事録を必ず作成、適切に保管することは会社法で定められています。不安があれば行政書士等に相談しましょう。


b.役員報酬規程の確認

 役員報酬変更時には、社内の役員報酬規程との整合性を確認する必要があります。役員報酬規程が存在する場合、その内容に従わない変更は無効となる可能性がありますので注意しましょう。



4.まとめ


役員報酬

 役員報酬の適切な設定は、最適な税務対策を行える点、会社の資金繰りを安定化させる点などで非常に有用です。一方で、その設定にあたっては考慮するべき事項が数多くあり、重要点の見落としなどが非常に大きな損失に繋がりかねません。 

 足立区の北千住税理士事務所では、経営者の皆様をサポートするサービスを提供しています。ぜひご気軽にご相談ください。




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※上記記事は令和6年12月時点の情報に基づいて記載しております。

※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。





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