保険会社や不動産会社で働く場合、給与とは別に『外交員報酬』を受け取ることがあります。
外交員に支払う外交員報酬は、税務上は『給与』とは違う取り扱いになり、状況に応じて確定申告を行わなければならないかもしれません。
外交員報酬だけ受け取っている場合もあれば給与も合わせて受け取っている場合もあるでしょう。
まずは受け取っているものが『給与』なのか『外交員報酬』なのかを理解しましょう。
給与との違いやパターンに応じた確定申告の方法なども税理士が解説します!
1 . 外交員報酬と給与の違い
外交員報酬と給与は、性質的な違いと税務上の取り扱いの違いがあるので、それぞれ解説します。
①性質的な違い
そもそも外交員とは、企業から雇われていないものの、継続的に企業からの委託を受けて、その企業の商品等の営業を自ら行っているような人を指します。
この外交員に支払う報酬を『外交員報酬』と言い、保険会社や不動産会社の営業の場合は、一般的には歩合給として支給されるケースが多いです。
それに対し『給与』とは、企業が従業員に支払う労働の対価で、基本給や残業代、各種手当、賞与等が含まれます。
基本的には企業と雇用契約を結び、企業の指揮命令に従い業務を行います。その労働の対価として、固定給や歩合給も含め『給与』として支給されます。
外交員報酬は成果に応じて支払われるのに対し、給与は成果にかかわらず労働の対価として支払われるところに違いがあります。
また、外交員は雇われおらず、企業からの委託で自ら営業活動を行っているので、それに係る収入や経費は自分で計算しないといけません。
②税務上の取り扱いの違い
外交員報酬の所得区分は"事業所得"の区分されるため、いわゆる個人事業主としての事業活動をしていることになります。
収入や経費を自ら計算し、毎年3月15日までに確定申告をする必要があります。
また、受け取る外交員報酬の金額の10.21%が源泉徴収されるようになっています。
これに対し給与は"給与所得"に区分され、収入が給与所得のみであれば、企業からの年末調整だけで完結するため基本的に確定申告は不要です。
給与金額に応じて毎月の給与から源泉徴収されますが、最終的には年末調整で精算されます。
外交員報酬は年末調整がないため、自ら確定申告をして源泉徴収された分も含めて精算しないといけません。
2 . 外交員報酬は確定申告が必要
外交員報酬は"事業所得"に区分されるため、基本的には確定申告をしなければなりません。
収支内訳書(または決算書)と確定申告書を作成し、3月15日までに申告と納税を行う必要があります。
報酬とは別に給与も貰っている場合は、その給与も合わせた確定申告が必要です。
ただし、以下の場合は所得税の確定申告は不要です。
①赤字の場合
他に所得がなく、外交員報酬のみで赤字になってしまった場合は確定申告不要です。
ただし、青色申告の場合は赤字でも確定申告をすればその赤字分を翌年に繰り越せますし、事業を行っている証明の為にも、赤字でも確定申告することをおすすめします。
②給与以外の所得が20万円以下の場合
給与と外交員報酬を貰っていて、外交員報酬の所得が年間20万円以下であれば申告不要です。
副業的に外交員報酬がある場合が当てはまり、給与以外の所得が20万円以下であれば所得税の申告不要ですが、住民税の申告は1円でも所得が発生すれば必要なので注意してください。
3 . 外交員でも給与の可能性がある
外交員として報酬を受け取っている場合でも、一部が給与となるケースもあります。
報酬が固定給とそれ以外に明らかに区分されている場合は、固定給を給与として、それ以外の部分を外交員報酬とする等、所得税基本通達でルールが定められています。
形態 | 区分 |
1. 外交員としての業務を行うために必要な旅費とそれ以外が明らかに区分されている場合 | 旅費以外の部分を給与として取り扱う |
2. 上記「1.」以外の場合で、報酬が固定給とそれ以外の部分で明らかに区分されている場合 | 固定給を給与として、それ以外の部分を外交員報酬として取り扱う |
3. 上記「1.」「2.」のどちらにも該当しない場合 | 総合的に判断し、給与と認められるものは給与、それ以外のものは外交員報酬として取り扱う |
例えば、保険会社で雇用されている外交員で、毎月固定給と歩合給をまとめて貰っている場合であっても、その内訳が明確に分かれている場合は、固定部分を給与、歩合部分を外交員報酬として扱わなければならない可能性があります。
逆のパターンもあり、雇用されていない外交員の報酬が、固定給と歩合給に明確に分かれていたら、固定部分は給与としなければならない可能性があります。
その場合、"給与所得"と"事業所得"の2つの所得があるため、両方を合算して確定申告を行う必要があります。
4 . 確定申告の準備
外交員報酬があり確定申告が必要な場合は、まずは以下の書類を準備しましょう。
・支払調書
・源泉徴収票(給与があれば)
・確定申告書
・収支内訳書(または青色申告決算書)
売上や経費の帳簿を付けておくとは大前提なので、帳簿は付けているものと仮定して解説していきます。
5 . 支払調書の確認
外交員報酬を受け取っている場合、委託されている企業から「支払調書」が年明けに貰えます。
この支払調書には年間の報酬金額や源泉徴収された所得税の金額が記載されています。
この支払調書は確定申告を進めるうえでも非常に重要な書類なので、必ず貰うようにしましょう。
①支払調書の「支払金額」を収支内訳書(または青色申告決算書)の「売上(収入)」に転記
②支払調書の「源泉徴収税額」を確定申告書第一表の「㊽源泉徴収税額」に転記
6 . 収支内訳書(または青色申告決算書)の作成
外交員報酬は事業所得に区分されるため、自分で収支の計算が必要になります。
白色申告の場合は『収支内訳書』、青色申告の場合は『青色申告決算書』を作成します。
外交員報酬として支給された額面の金額が「売上(収入)」となり、外交員としての活動にかかった経費を集計して決算書を作成します。
なお、受け取った外交員報酬は10.21%の源泉徴収がされているため、手取り額を売上として記載しないように注意してください。
源泉徴収前の額面の金額が売上となり、これは「支払調書」から年間の額面金額を確認することができます。
①決算書の「売上(収入)」を確定申告書第一表の「㋐営業等」に転記
②決算書の「所得金額」を確定申告書第一表の「①営業等」に転記
7 . 源泉徴収票の確認
外交員報酬とは別に給与を受け取っている場合、雇用されている企業から「源泉徴収票」が年末から年明けに貰えます。
この源泉徴収票には年間の給与金額や源泉徴収された所得税の金額が記載されています。
外交員報酬と給与は最終的に合算して税金計算をするので、この源泉徴収票を確認して確定申告書を作成していきます。
源泉徴収票は確定申告を進めるうえでも非常に重要な書類なので、必ず貰うようにしましょう。
①源泉徴収票の「支払金額」を確定申告書第一表の「㋔給与」に転記
②源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を確定申告書第一表の「⑥給与」に転記
③源泉徴収票の「源泉徴収税額」を確定申告書第一表の「㊽源泉徴収税額」に転記
※支払調書からも転記している場合は合算して記載
8 . 確定申告書の作成
あとは上記で転記した所得金額を合計し、所得控除があればそれを差し引いて、「㉚課税される所得金額」を求めます。
そこに税率を掛けて所得税額を求めて完了です。
※細かい所得控除や税額控除の説明は割愛します
なお、最終的な所得税額が、「㊽源泉徴収税額」よりも少なかった場合はその差額が還付、多かった場合はその差額が追加で納税となります。
9 . まとめ
外交員報酬と給与を両方貰っている場合、概要を理解していないと確定申告が難しく感じます。
理解してしまえばそこまで難しくないので、諦めずに確定申告に立ち向かいましょう。
それと、帳簿を付けるのを忘れずに!
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※上記記事は令和6年12月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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