認定賞与とは?税務調査で経費が否認されてしまうかも...!?認定賞与の意味とリスク、対応のポイントについて足立区の税理士が解説!
- hsatou0
- 1 日前
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税務調査の際によく問題となる項目の一つが「認定賞与」です。
特に中小企業や同族会社では、事業の経費とプライベートの支出が曖昧になりがちで、意図せず税務リスクを抱えているケースも少なくありません。
認定賞与となってしまった場合は結構やっかいで、甘く見てはいけません。
「認定賞与」とは何か?そして税務調査で指摘を受けないための対応策等について、税理士が徹底解説します!
目次
1. 認定賞与とは?
2. 役員賞与の取り扱い
3. 認定賞与とみなされる具体的なケース
4. 認定賞与のリスク
5. どのくらい追徴になる?
6. 認定賞与とされないためのポイント
7. まとめ
1. 認定賞与とは?

認定賞与とは、言葉の通り「賞与に認定する」という意味です。
役員が法人から経済的な利益を受けているとみなされた場合、それは実質的に役員への賞与として認定されてしまうことです。
例えば、役員が事業と無関係の家族旅行費を経費で計上していたとします。
その費用は経費にしているので、もちろん法人から支出していることになります。
ですが、事業とは無関係の為、役員の家族旅行費用を法人が負担してあげているだけと言えます。
それが税務調査で発覚した場合、その費用は"役員への賞与"とみなされる訳です。
これを「認定賞与」と呼び、事業と無関係のプライベートの支出を経費に計上している場合に、税務調査で認定されてしまうケースが多いです。
では、そもそも役員賞与になってしまうことに何の問題があるのでしょうか?
2. 役員賞与の取り扱い

役員賞与とは、役員に支給される賞与のことです。
役員報酬は基本的に、毎月定額を支給することになりますが、役員賞与は毎月定額のものとは別に、臨時的に支給されるものです。
役員賞与は、一定の場合を除き、原則として損金に算入することができません。つまり、役員に賞与を支給しても、税金の計算上は経費に入れることができないということです。
好き勝手に役員への賞与を損金に算入することができたら、いくらでも利益操作ができてしまう為、原則は毎月定額のみが損金に算入され、役員賞与は損金不算入となるのです。
しかし、事前に税務署に届出書を提出することで、役員賞与を損金に算入することができる可能性があります。
これを『事前確定届出給与』と言い、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ただし、これは定められた期日までに税務署へ届出を行い、届出の内容通りに賞与を支給する必要がある為、税務調査で過去分の経費を認定賞与とみなされてしまった場合は意味を成しません。
つまり、税務調査で認定賞与とみなされてしまったら、その経費は役員への賞与とみなされ、さらに損金不算入となる為、実質的に経費がそのまま除外される形になります。
では、具体的にどんな経費が認定賞与になってしまう可能性があるのでしょうか?
3. 認定賞与とみなされる具体的なケース

実際の税務調査で、認定賞与の対象となることが多い具体的なケースとしては以下のようなものが考えられます。
・役員のプライベートな物品やサービスの購入費
・取引先や事業とは無関係のゴルフプレー代やレッスン代
・家族旅行や特定の役員と社員だけでの慰安旅行
・役員一人だけの飲食費や事業と無関係な人物との飲食費
主に事業とは関係のない役員の個人的な支出が該当します。
また、本当に事業と関係している支出であるにもかかわらず、それを証明できる材料が無いと、認定賞与とされる可能性もあります。
事業の経費である証拠を残しておくことが大切です。
4. 認定賞与のリスク

認定賞与には様々なリスクがあります。
「とりあえず経費に入れておいて、調査で指摘されたら除けばいいや...」と思っていると痛い目をみます。侮ってはいけません。
認定賞与には主に以下の様なリスクがあります。
①役員の所得になる
認定賞与とみなされた場合、その経費は役員賞与として扱うことになりますが、その役員賞与は役員の所得に加算しなくてはなりません。
つまり、その役員の所得が増えるため、追加で所得税・住民税が発生することになります。
認定賞与により法人の経費が認められなくなるうえに、役員個人の所得が増加してしまいます。
所得税と住民税を合わせた最低税率が15%なので、認定賞与の金額×15%以上が個人の負担として増加してしまうことになります。
役員賞与は損金不算入なので、法人税の増加と役員の所得税・住民税の増加でダブルパンチとなります。かなりの痛手です。
さらに、認定賞与とみなされた場合、様々な加算税の対象になることも...。
②重加算税の対象になる!?
認定賞与とみなされて追加で税額が発生した場合、それは「重加算税」の対象になる可能性が高いです。
重加算税とは、仮装・隠蔽等により不当に所得を減らそうとした場合に課される加算税で、加算税の中では最も重いペナルティです。
認定賞与により追加で納付すべき税額に対して35%が追加で徴収されます。
なぜ認定賞与が最も重いペナルティである重加算税の対象になるのか?
それは、役員の個人的な支出を"仮装"して法人の経費として処理しているからと考えられています。
例えば、その経費の領収書の宛名が法人名となっている場合、本来は個人的な支出なのに、法人名で領収書を貰って経費計上することが"仮装"に該当すると考えられます。
逆に、個人名の領収書を誤って法人の経費として処理してしまっていた...という場合は"仮装"ではなく単なる経理ミスとも言えるので、重加算税の対象になることは少ないです。
認定賞与=重加算税となってしまう可能性が非常に高いので、証拠の準備や会計処理には注意が必要です。
なお、重加算税の対象とならなかった場合は、「過少申告加算税」となり、追加で納付すべき税額に対して10%または15%が課されます。
③次回の税務調査が速くなる可能性がある
重加算税を課された場合、その履歴は税務署内に残り、早いタイミングで次回の税務調査が来る可能性があります。
ただし、認定賞与は悪質でないパターンも多いので、必ず早いタイミングで来る訳ではありませんが、念のため注意が必要です。
④延滞税も発生
認定賞与により追加で税額が発生する場合、それには延滞税も発生します。
本来納付すべきだった期限から遡って延滞税が計算される為、過去分かつ高額な場合は延滞税も馬鹿にはできません。
延滞税の具体的な計算は以下の国税庁のページで確認することができます。
⑤源泉所得税の納付漏れになる
認定賞与とみなされた場合、役員への賞与扱いになるので、その賞与からは所得税の源泉徴収が必要だったことになります。
つまり、源泉所得税の徴収・納付漏れということになるので、その不足分も追加で納付が必要になります。
また、源泉所得税の納付漏れにより「不納付加算税」という加算税が課されることにもなり、納付すべき税額に対して10%が課されます。
5. どのくらい追徴になる?

例えば、家族旅行費100万円が認定賞与とされた場合、100万円が役員賞与となり損金不算入、利益がそのまま100万円増えるのでその100万円に対して追加の法人税が課されます。
そしてのその追加の法人税に対して35%の重加算税が課されます。
また、役員賞与により100万円が個人の所得として増加します。
法人税:100万円×30%(法人税実効税率)=30万円
重加算税:30万円×35%=10.5万円
所得税:100万円×5%(最低税率)=5万円
住民税:100万円×10%(最低税率)=10万円
さらにここに延滞税や源泉所得税の不納付加算税も課されます。
※今回は簡易的な計算のため延滞税と不納付加算税の金額は考慮していません。
法人税30万円 + 重加算税10.5万円 + 所得税5万円 + 住民税10万円 + 不納付加算税+延滞税 |
100万円の認定賞与に対して、最低でも555,000円の追徴が発生することになります。
これはあくまでも最低金額の目安ですので、555,000円以上は発生すると思った方が良いでしょう。
結果的に100万円に対して半分以上が追徴税額として課されるので、侮ってはいけません。
6. 認定賞与とされないためのポイント

前提として、役員の個人的な支出は経費に計上しないようにしましょう。
何でもかんでも闇雲に経費に突っ込んでいると認定賞与とされてしまう可能性が高くなります。
きちんと業務と関係のある経費だけを計上するように注意しましょう。
しかし、業務と関係があり本来は経費計上できるはずが、それを証明できずに認定賞与とされてしまう可能性もなくはありません。
いくら口頭で説明しても、それを証明できる客観的な証拠がないと、認定賞与とされてしまいます。
領収書はもちろん、取引先とのやり取りのメール、手帳のメモ書き、日記、日報、事業計画、写真、動画など、経費に計上するからには証明となり得るものは残しておくことが大切です。
これらがあれば絶対に大丈夫ということではありませんが、ちゃんと説明できて証明を提示できれば、認定賞与とされる可能性は低くなります。
7.まとめ
税務調査で役員賞与と認定されてしまうケースには、主に個人的な支出を経費に計上していたことが挙げられます。
認定賞与はペナルティの中では最も重い重加算税が課される可能性もあり、ダメージは思ったより大きくなることも少なくありません。
リスクをきちんと理解し、正確な会計処理を心掛けるようにしましょう。
会計処理や税務調査に不安がある方は、まずは弊社にご相談ください。
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※上記記事は令和7年4月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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